单项选择题

(3) 多くの人は、個性の持ち主にあこがれて、できれば見習いたいものだと思いながら、実は一方で「人並み」であることをひそかに求めてもいる。「ひと」からはずれていたり、おくれていたりすることは、彼らを極度に不安にする。「同じ」思いを抱いていたことを発見することは大きな安心を与えるはずであるから、「同じ」思いの通ずる仲間が見つかると、すぐにでも群れようとする。①そういう人間の傾向は、別に日本人にだけそなわったものというわけでもなく、ほとんど本能的なものとして、多かれ少なかれ誰もが抱えている要素であるといってよい。 にもかかわらず凡庸(注1)さは、表向き、なぜこれほど忌み嫌われる(注2)のか。それは、おそらく、人間というものの大多数が凡庸な生を生きるほかなく、自分の未来もまたその限界のなかにあることをうすうす知っているのだが、そのことをそう決めつけられることは、自分の生を希望のない確定的なイメージに塗り込めてしまうことであり、それは②個としての価値を否定されてしまうことにつながると感じられるからである。 生きる意欲が現にあるのに、おまえの未来はこのとおり当たり前のものでしかないと規定されることは、未来に向かうものとしてある「生の意欲」の本質的条件を根こそぎにしてしまう。自らが有限な存在であることを大筋ではわきまえつつ、しかもその範囲内に未知の部分を必ずいくらかは残しておく。そこに自らが個であることの確証をかろうじて求めようとするのだ。 (小浜逸郎『この国はなぜ寂しいのかー「ものさし」を失った日本人』による) (注1)凡庸さ:ここでは、人並み、平凡であること (注2)忌み嫌う:ひどく嫌う

筆者の考えに合っているのはどれか。

A.人間は自らの可能性を広げ、自身の価値を高める。
B.人間は個であることの確証を得て、自身の価値を高める。
C.人間は自らに希望の余地を残し、生きる意欲を保つ。
D.人間は常に新たな希望を探しながら、生きる意欲を保つ。